こんにちは!今回は第141回目になります!
今回は、『おいしいごはんが食べられますように』という小説について。
著者は、高瀬隼子さん。
第167回芥川賞受賞作になった作品です。
今回は、こちらの本について、小説のあらすじと、3つの疑問とそれぞれの考察を書いていこうと思います。
ネタバレも含みますので、ご注意ください。
それでは、ぜひ最後までご覧ください。
おいしいごはんが食べられますように|あらすじ
主な登場人物
主な登場人物は、3人。
まず、主人公は、29歳の男性、二谷。
ご飯にとことん興味のない会社員です。
そして、二谷の同僚で30歳女性社員の芦川。
身体が弱く、仕事を休みがち。
料理が得意で、二谷と付き合っています。
最後に、同じく二谷の同僚で、後輩女性社員の押尾。
二谷と同じく仕事がそこそこ出来、仕事を休みがちな芦川のカバーをする。
あらすじ
「わたし、芦川さんのこと苦手なんですよね」
と、二谷は、押尾から告白されます。
そして、「芦川さんに一緒にいじわるしませんか?」と。
物語の中盤、身体が弱く早退した芦川は、お詫びにマフィンを作ってきます。
そして、それ以降、職場に定期的に自作のお菓子やケーキを持ってくることに。
そのお菓子やケーキは、何度かゴミ箱に捨てられていました。
おいしいごはんが食べられますように|考察
ここから、『おいしいごはんが食べられますように』の考察について書いていこうと思います。
ネタバレも含みますので、ご注意ください。
おいしいごはんが食べられますように|考察①
誰が芦川のケーキを捨てたのか?
これに対して、小説では誰がやったのか語られていません。
僕なりに考察をしてみました。
結論、僕なりにですけど、作者は“誰だってよかった”ような気がします。
他の方のレビューを見ると、「送別会でクッキーを渡したパートさん」であったり、正義感の強い「原田さん」が意外と。
なんて、書かれていましたが。
何となく、“毎回仕事のお詫びでお菓子なんて持ってくるなよ”
“仕事のお詫びは、仕事で返せよ”
“料理が上手いことをアピールしてるだけじゃないの?”
なんて思う人がいることに対して、気持ちが分かるような気がします。
だからこそ、作者は犯人を明かさないことで、世間的な一般意見のようにしているのではないか、と考察します。
おいしいごはんが食べられますように|考察②
続いて、二谷は最後になぜ「結婚すんのかな」と呟いたのか。
これに対して、これも僕なりの意見ですけど、ポロッと出てしまっただけなような気がします。
でも、この物語に続きがあるのであれば、結婚しているんじゃないかな?と思います。
物語の序盤36ページに、こんなことが書いてあります。
結婚生活の想像に自然と芦川さんを当てはめていることに思い至り、一人で静かに動揺するが、結局自分は芦川さんか、芦川さんみたいな人と結婚するのがいいんだろうな、と納得してもいる
また22ページにも、二谷の結婚観について触れられています。
自分はいつか結婚するんだろう、と二谷は思っている。結婚がしたいわけではなくて、結婚したくないと思ったことがないからだった。世の中には一生結婚しないと決めている人もいるけど、そういうのは確固たる意志がある人だけが決意するものであって、特に何の希望もない自分のような者は、いつか結婚しなければ辻褄が合わない。
ただ、二谷と芦川の結婚生活は、あんまり幸せそうに思えないですけどね。
おいしいごはんが食べられますように|考察③
最後に、この『おいしいごはんが食べられますように』のタイトルの意味について。
これは、作者が、二谷に対して、もしくは二谷のように荒んだ人生を生きている人に対して込められたメッセージではないでしょうか?
僕の偏見ですけど、ごはんって「何を食べるか」よりも「誰と食べるか」の方が圧倒的に重要。
この前、僕は職場のレクレーションで1万5千円の中華を食べに行きました。
特別なことがない限り、絶対プライベートでは払わない額です。
美味かったは、美味かったですよ。
でも、正直、気を遣いながら食べる料理は、味を感じにくいんですよね。
総合的な満足度で言うと、友達とのファミレスの方が高い気がします。
物語で支店長が、「飯はみんなで食べたほうがうまい!」と言っていましたが、
僕的には、「気を許せる人との飯はうまい」と思います。
二谷は、誰にも心を開いていない感じがしませんか?
彼女である芦川に対しても、終始取り繕った反応をしているし、昔の友達のラインにも一切参加していません。
おいしいごはんが食べられますように、というのは、作者が二谷に対して、そうした仲間を持って欲しいというメッセージなような気がします。
最後に
今回は『おいしいごはんが食べられますように』について書いてみました。
高瀬隼子さんの小説は、淡々としていて読みやすいですよね。
『おいしいごはんが食べられますように』は、2時間くらいで読めちゃいました。
淡々としているんですが、読み終わった後なんか心に引っ掛かるような、そんな後味を残します。
もし良かったら、実際に手に取って読んでみてください。
また、以下の記事では、同じく高瀬隼子さんの小説『水たまりで息をする』について、書いています。
こちらも、とっても面白いです。
ぜひあわせて読んでみてください。
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